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マメゲンゴロウを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。
本記事では、飼育に関する情報が少ないマメゲンゴロウの飼い方や産卵のさせ方、卵や幼虫の育成方法などについてまとめてみました。
分類:ゲンゴロウ科マメゲンゴロウ属
和名:マメゲンゴロウ
学名:Agabus japonicus
![画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: B874206F-0629-4602-BFB3-4BE668A250BE.jpeg](https://mizutamari-crab.com/wp-content/uploads/2022/02/B874206F-0629-4602-BFB3-4BE668A250BE.jpeg)
マメゲンゴロウは、体長7ミリ程度の小型のゲンゴロウです。頭部は黒色で、上翅は茶褐色や暗褐色をしています。
落ち葉のたまった浅い水たまりや水田、河川のよどみなどに生息する普通種です。繁殖期は3月頃と考えられています。
マメゲンゴロウの繁殖に取り組んだ時期
今回、マメゲンゴロウの繁殖に取り組んだのは11月から翌年の3月です。
採卵は、11月下旬から12月下旬に行い、卵や幼虫の育成は、11月下旬から翌年の3月頃までの長期に渡っています。
西日本では繁殖期は3月頃と考えられていますが、今回は試しに11月から飼育下での繁殖に取り組んでみたところ産卵を確認しました。
飼育下で繁殖に取り組んだ場合、飼育条件によって本来の繁殖期ではない時期に産卵することが考えられます。また、自然下でも今回のように、水温が下がる11月頃に産卵している可能性も考えられますが、これについては今後、詳しい自然下での生活史が明らかになることを期待しています。
マメゲンゴロウ、成虫の飼育方法(簡易版)
今回、ご紹介する飼育方法は、水草や流木などできれいにレイアウトしたものではありません。水換えや掃除などの日常の飼育管理や採卵のしやすさ(繁殖)に重点を置いたとてもシンプルなものです。
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成虫の飼育容器
成虫の飼育には、100円ショップで購入した小型のタッパー(11.5×8×4.5センチ)を使用し、園芸用の鉢底ネット(13×3.5センチ)を山折りにして設置しました。鉢底ネットの両端は下の写真のように1センチ程度折り曲げて安定させています。
![](https://mizutamari-crab.com/wp-content/uploads/2022/03/BFB21B45-B3AA-463A-88BD-1C376FCBE27E-1024x768.jpeg)
鉢底ネットの役割は、成虫の足場や甲羅干し用の陸場、そしてマメゲンゴロウの産卵基質も兼ねています。
タッパーには、汲み置きした水道水を水深2.5〜3センチ程度入れ、鉢底ネットが完全に水没しないように調整しました。
また、脱走防止のためフタは必要です。既存のフタでは気密性が高く蒸れやすいので、状況をみて小さな穴を複数開けることをおすすめします。
成虫のエサ
成虫のエサは、市販の冷凍赤虫を解凍して、1日1〜2回適量与えました。小型の種類なので食べ残しが出ないように注意が必要です。
※飼育におすすめのこだわり赤虫はamazonでは販売してません
上手く産卵させるには、成虫の栄養状態も関わってくると考えられるので、よく観察しながらエサの量を調整するのがポイントです。
水換え
小型のタッパーを使った簡易的な飼育方法なので、定期的な水換えは必要です。目安として3日に1回程度、全量を汲み置き水を用いて行いました。底砂なども入っていないので簡単に水換えができます。
飼育水の汚れやにおいがあるとき、また、食べ残しが多いときなどはこまめに水換えが必要です。
水温と光条件
水温は、エアコンが設置されていない11月から12月の室温で管理しました。
野外では繁殖期が3月頃ということから、低水温下で産卵しているのではないかと考え、今回は最も水温が下がりやすい窓際に置いて飼育を開始しました。外気温の影響により窓際に置いた飼育容器の水温は、平均約11℃でした。
光条件は、窓から入る自然光のみとし、専用の照明は設置しませんでした。
産卵基質(産卵床)
マメゲンゴロウは、水中の植物片などに卵を産み付けることから、今回は植物片の代わりに足場として入れていた鉢底ネットを産卵基質としても使用しました。
マメゲンゴロウ、産卵のさせ方
大型のゲンゴロウ類のオスには、前肢に発達した吸盤があり、簡単にオスとメスを見分けることができます。しかし、小型種であるマメゲンゴロウは肉眼で見分けるのがとても難しかったため、今回のは雌雄の判別をせずに成虫5個体を同居させてペアリングを試みました(運良く雌雄がそろっていました)。
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窓際に置いて低水温下で飼育観察を続けていると、産卵基質として入れた鉢底ネットやタッパーの底面に複数の卵が産み付けられているを確認できました。
![](https://mizutamari-crab.com/wp-content/uploads/2022/03/image.png)
採卵は、成虫をすべて別のタッパーに移すことで行いました(タッパー自体に卵を産み付けていることが多かったため)。卵が産み付けられたタッパーは、窓際からは離れた場所に置き、室温で管理しました。
ちなみに水温は低かったですが、成虫は赤虫をよく食べていました。
マメゲンゴロウ、各成長段階の平均日数
卵 | 1-2齢 | 2-3齢 | 3齢-上陸 | 上陸-蛹化 | 蛹化-羽化 |
18.9 | 7.0 | 6.4 | 17.4 | 11.7 | 15.7 |
※育成日数は、飼育水温や栄養条件などで多少前後すると考えられます。
マメゲンゴロウ、幼虫の飼育方法
ゲンゴロウ類の幼虫は、共食いすることが知られているため基本的には個別飼育をおすすめします。
種類によっては共食いしにくい幼虫もいるようですが、今回は、マメゲンゴロウ幼虫の育成期間も調べたかったので個別飼育しました。
幼虫の飼育容器
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幼虫の飼育には、100円ショップで購入したお弁当用のマヨネーズカップ(直径4×高さ2.5センチ)を使用しました。カップには、汲み置きした水道水を水深5ミリ程度入れています。幼虫の飼育には、上陸させるまでフタは使用していません。
幼虫のエサ
エサは、成長に合わせてアルテミアの孵化幼生と市販の冷凍赤虫の2種を使用しました。
アルテミアは、孵化幼虫から2齢幼虫に脱皮するまでの期間に与え、2齢幼虫に脱皮後は市販の冷凍赤虫のみで育成しました。
エサやりの頻度は、朝夕各1回行い、少し食べ残しが出るぐらい多めに与えました。
アルテミアを食べる孵化幼虫
水換え
水換えは、スポイトを用いて汲み置きした水道水で毎日、ほぼ全量を夕方に1回行いました(スポイトで幼虫を吸わないように注意してください)。成虫同様、飼育水の汚れやにおいがあるとき、また、食べ残しが多いときなどはこまめに水換えが必要です。
また、脱皮中や脱皮直後の幼虫がいる時は、しばらく時間を空けてから水換えをしました。
水温と光条件
幼虫の飼育水温は、11月下旬から翌年の3月頃まで室温で管理しています。卵同様、窓際から離した場所に置いて管理し、水温は9〜14℃程度でした。
光条件は成虫同様、窓から入る自然光のみです。
マメゲンゴロウ、孵化幼虫
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マメゲンゴロウは産卵から平均18.9日で孵化しました。孵化幼虫は、うすい黒色をしています。体長は平均2.5ミリほど。
孵化後しばらくしてアルテミアの孵化幼生を与えると、反応よく捕食しました。野外ではミジンコなどの小型のプランクトンを食べているのかもしれませんね。
マメゲンゴロウ、2齢幼虫
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平均7.0日ほどで脱皮をして2齢幼虫になりました。脱皮直後の平均体長は5.4ミリほど。
2齢幼虫以降は、容器の底に解凍した冷凍赤虫を入れておくと摂餌するようになります。
マメゲンゴロウ、3齢幼虫
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平均6.4日ほどで脱皮をして3齢幼虫になりました。脱皮直後の平均体長は8.0ミリほど。
マメゲンゴロウ、死んだふり?
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今回の観察中に、飼育中のカップを揺らしたり、水換えのためスポイトで作業をしていると、写真のように幼虫がひっくり返ってしばらく動かないことがありました。これは擬死行動なのだろうか?詳細は不明ですが、複数の個体で観察されました。
3齢幼虫の謎の上陸行動
3齢幼虫になってから約8日経過した頃に、飼育容器の壁を登ろうとする謎の行動が何度も観察されました。
見た目はまだ上陸させるには早いタイミングですが、そのまま水中に置いておくと溺れて死ぬ個体が確認されました。謎の行動をする幼虫は一度、加湿するピートモスの上にのせるか、水深をごく浅くして1〜2日間たってから元に戻すと死ぬことはなくなりました。
マメゲンゴロウ、上陸直前の幼虫
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3齢幼虫は平均17.4日で強制上陸させました。
上陸直前の幼虫は、透けて見えていた消化管がほとんど見えなくなります。この状態を上陸のタイミングとしました。上陸直前の幼虫の体長は平均11.6ミリほど。
マメゲンゴロウ、上陸のさせ方
上陸にも幼虫の飼育に使用しているマヨネーズカップを使いました。カップには、水道水であらかじめ加湿しておいたピートモスを半分程度入れています。
その上にマメゲンゴロウの幼虫を強制上陸させました。上陸後は脱走させないためにカップにフタをする必要があります。
ピートモスについて
ピートモスは、ホームセンターの園芸コーナー等で購入できます。
水道水で加湿したピートモスは、軽く手で絞って水が落ちる程度の状態のものを使用しています。
上陸させた幼虫が蛹室をなかなか作らない時は、ピートモスの水分量があっていない可能性があるので、状況によって水分量を調整してください。
マメゲンゴロウ、土繭
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強制上陸させると数日以内に、写真のような球状の蛹室(土繭)を土の表面に作ります。
写真は、天井部分をピンセットで開けて内部を観察したときのものです。本来は天井部分もきれいにふさがれています。
マメゲンゴロウ、蛹化
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強制上陸から平均11.7日ほどで蛹化を確認しました。
今回は、蛹化のタイミングを確認するため、蛹室の中を観察しています。
マメゲンゴロウ、羽化
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蛹化した個体は、平均15.7日ほどで土繭の中で羽化していました。新成虫の体長は平均6.5ミリ。
羽化直後は真っ白ですが、徐々に黒っぽく変化してきます。
卵から羽化まで平均75.6日と、冬季に繁殖させたマメゲンゴロウの育成期間は、かなり長い結果となりました。
マメゲンゴロウは、普通種のゲンゴロウですが、詳細な繁殖期など生活史について明らかになっていないことがまだ多くあるようです。
今回は、晩秋から冬季に行った飼育下での繁殖でしたが、成虫まで育成することができました。野外でも水温が下がる秋頃に、もしかすると繁殖をしているのではないかと私は考えていますが、実際のところは分かりません。機会があれば秋頃にマメゲンゴロウの幼虫を探してみたいと考えています。春頃と秋頃の2回産卵だと面白いですね。
本記事が、マメゲンゴロウの繁殖や同属のゲンゴロウ類の繁殖の参考になればうれしいです。