【飼育方法】マルチビゲンゴロウを繁殖させてみた

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マルチビゲンゴロウを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。

本記事では、マルチビゲンゴロウの飼い方や産卵のさせ方、幼虫の育成方法についてまとめてみました。

マルチビゲンゴロウ 解説

分類:ゲンゴロウ科マルチビゲンゴロウ属

和名:マルチビゲンゴロウ

学名:Leiodytes frontalis

体長1.5〜2ミリの小型のゲンゴロウ。背面には不規則な模様がある。

水質の良い止水域に生息し、野外では3〜6月頃に幼虫が確認されている。

マルチビゲンゴロウの繁殖に取り組んだ時期

今回、マルチビゲンゴロウの繁殖に取り組んだのは4月から6月です。

マルチビゲンゴロウ 、成虫の飼育方法

日々のメンテナンスや採卵のしやすさなど、繁殖を目的にした簡易的なマルチビゲンゴロウの飼育方法をご紹介します。

成虫の飼育容器

成虫の飼育には、100円ショップで購入した小型タッパー(8×6×3センチ)を使用しました。

汲み置きした水道水を水深1センチ程度入れ、甲羅干しや休憩場所となる鉢底ネット(網目約2ミリ)を適当なサイズにカットし、山折にして設置しました。

管理時以外は脱走防止のため、既存のフタ(通気用の小さな孔を開けたもの)をしています。

成虫のエサ

成虫のエサは、毎日、市販の冷凍赤虫を適量与えました。

エサやりの頻度は、1日1回とし、食べ残しが出ないように注意しました。

小型種なので残餌になりやすく、飼育容器も小型のため水質が悪くなりやすいことを頭に入れておきましょう。

水換え

水換えは、2〜3日を目安に全量を汲み置きした水道水で行いました。

エサのやり過ぎや食べ残しで、飼育水の汚れやにおいがあるときは、水換えが必要です。

水温と光条件

水温は、エアコンが設置されていない室温で管理しました。

また、専用の照明は設置せず、光条件は窓から入る自然光のみです。

産卵基質(産卵床)

野外でのマルチビゲンゴロウの産卵基質が調べてもよく分かりませんでした。

別種ですが、チビゲンゴロウを繁殖させたときは、タッパーの表面や鉢底ネットの表面に産卵していたので、今回はそれを参考にしてみました。

観察の結果、タッパーの壁面や鉢底ネットの表面に産みつけらた卵を確認できました。

鉢底ネットに産みつけらたマルチビゲンゴロウの卵。鉢底ネットの網目は約2ミリ。

野外では、水中の水草や石、落ち葉の表面などに産卵しているのではないかと思われます。

マルチビゲンゴロウ 、ペアリング

今回は、飼育容器に成虫を10個体入れて観察しました。

小型種で雌雄を見分けるのが難しかったこともあり、複数個体入れて交尾行動する様子を見て、雌雄が容器に入っていることを確認しました。

マルチビゲンゴロウ 、幼虫の飼育方法

今回の繁殖で、幼虫の育成に用いたものなどを参考までに紹介します。

幼虫の飼育容器

成虫同様、飼育には100円ショップで購入した小型タッパー(8×6×3センチ)を使用しました。

タッパーには、汲み置きした水道水を水深5ミリ程度入れています。幼虫の飼育には、上陸させるまでフタは必要ありません。

また、幼虫の足場用の水草や鉢底ネット等も必要ありません。

幼虫のエサ

幼虫のエサには、アルテミアの孵化幼生やミジンコ、カイミジンコ、市販の冷凍赤虫を使用しました。

エサやりの頻度は、1日1回とし、成長段階に合わせてエサの種類を変えました。

冷凍赤虫は各齢期の体サイズに合った細いものをピンセットで選別し、容器の底に沈めるようにして与えました。

特に1齢幼虫の中には赤虫を摂餌できない個体がいたので、アルテミアの孵化幼生があると育成には安心です。

水換え

水換えは、スポイトを用いて食べ残し等の汚れを取り除き、汲み置きした水道水で毎日、減った分の水を補給水しました。

成虫同様、飼育水の汚れやにおい、水面に油膜があるときはこまめに水換えする必要があります。

水温と光条件

幼虫も成虫同様、室温管理と窓からの自然光のみで育成しました。

マルチビゲンゴロウ、 孵化幼虫

とても小さなマルチビゲンゴロウの孵化幼虫。

孵化後しばらくするとアルテミアの孵化幼生を捕食するようになります。

アルテミアは、小さなゲンゴロウ類の繁殖には欠かせないエサのひとつです。

マルチビゲンゴロウ、 2齢幼虫

あっという間に脱皮したみたいで、2齢幼虫の写真を撮り忘れていました。

脱皮殻を見つけて成長を記録していますが、幼虫が小さいので見逃してしまいます(悔しい‥)。

マルチビゲンゴロウ 、3齢幼虫

3齢幼虫は赤虫も摂餌します。

ケシゲンゴロウの幼虫は、カイミジンコを捕食することで有名になりましたが、マルチビゲンゴロウも上手にカイミジンコを捕食します。

幼虫を観察する機会があれば、ぜひ試してほしい観察ポイントです。

カイミジンコを捕食したマルチビゲンゴロウの幼虫。

マルチビゲンゴロウ、上陸方法

上陸容器にも幼虫飼育と同じ小型タッパーを使用しましたが、100円ショップで販売されているマヨネーズカップ(直径4×高さ2.5センチ)などのより小型の容器で代用できます。

上陸容器には、水道水であらかじめ加湿しておいたピートモスを3〜4ミリ程度の厚さになるように入れ、その上に幼虫をのせました。幼虫は小さいのでピートモス自体は、容器の一部に敷く程度で全く問題ありません。

ピートモスについて

ピートモスは、ホームセンターの園芸コーナー等で購入できます。

水道水で加湿したピートモスは、軽く手で絞って水が落ちる程度の状態のものを使用しています。上陸させた幼虫がうまく蛹室を作れないときは、ピートモスの水分量があっていない可能性があるので、状況を見て水分量を調整してください。

幼虫は上陸させた土の上を歩き回り、表面の浅い場所に潜り、蛹室を作ります。

マルチビゲンゴロウ 、蛹化

上陸をさせてから数日で蛹化しました。小さくてかわいいですね。

体の色がオレンジ色なのは、エサのアルテミアのせいなのだろうか。

今回はやさしく土を掘って観察しています。

マルチビゲンゴロウ 、羽化

蛹化して数日で羽化していました。しばらく土の中で過ごしてから脱出してきます。

マルチビゲンゴロウは、2ミリ程度と小型のためタッパー等を使って飼育や繁殖を簡単に楽しむことができます。

一方でかつては普通に見られていましたが、現在は比較的稀な種である一面をもつゲンゴロウのようです。

本記事がマルチビゲンゴロウや同属のゲンゴロウ類の繁殖の参考になればうれしいです