「この記事はPRを含みます」
ツブゲンゴロウを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。
本記事では、ツブゲンゴロウ成虫の簡易的な飼い方や卵の産ませ方、幼虫の育成方法についてまとめてみました。
分類:ゲンゴロウ科ツブゲンゴロウ属
和名:ツブゲンゴロウ
学名:Laccophilus difficilis
体長4〜5ミリ程度の小型のゲンゴロウ。背面は黄褐色で不明瞭な縦じま模様がある。
植物が豊富な止水環境に生息。近年、各地で減少傾向にある。
ツブゲンゴロウの繁殖に取り組んだ時期
今回、ツブゲンゴロウの繁殖に取り組んだのは4月から5月です。
ゲンゴロウのなかまは、種類によって繁殖期が異なります。また、自然下での詳細な繁殖期が分かっていない種もまだ多くいます。
ツブゲンゴロウ、成虫の飼育方法(簡易版)
今回は、水換えや掃除などの日常の飼育管理のしやすさや採卵のしやすさ(繁殖)に重点を置いた、簡易的なツブゲンゴロウの飼育方法をご紹介します。
成虫の飼育容器
成虫の飼育には、100円ショップで購入した小型のタッパー(11.5×8×4.5センチ)を使用し、汲み置きした水道水を水深3センチほど入れました。
脱走防止のため管理時以外はフタをします。また、既存のフタは気密性が高いので、小さな穴を複数開けて通気性を良くしておくことをおすすめします。
成虫のエサ
成虫のエサは、市販の冷凍赤虫を解凍して適量を与えました。
エサやりの頻度は、1日1〜2回程度とし、食べ残しが出ないように量を調整しました。
水換え
水換えは、3日に1回を目安に全量を汲み置きした水道水で行いました。
飼育水の汚れやにおいがあるときはその都度水換えが必要です。
水温と光条件
水温は、エアコンが設置されていない4月から5月の室温で管理しました。
また、専用の照明は設置せず、光条件は窓から入る自然光のみです。
産卵基質(産卵床)
産卵基質には、アマゾントチカガミを使用しました。
ツブゲンゴロウ、産卵のさせ方
今回は飼育容器に、成虫を複数個体入れてペアリングしました。
同属のルイスツブゲンゴロウは植物の組織内に産卵することを確認しています。
そこで今回の繁殖でもアマゾントチカガミ(浮葉直径1〜1.5センチ程度)を産卵基質として、水面に浮かべて使用しました。
観察を継続していると写真のように浮葉の裏にあるスポンジ部分(浮嚢)に産み付けられた卵を複数確認できました。
今回の観察からツブゲンゴロウも植物の組織内に産卵するタイプと考えられました。また、ツブゲンゴロウの卵はきれいな緑色をしていました。
採卵は、アマゾントチカガミを新しいものと交換する方法で行い、孵化するまで汲み置きした水道水を入れた適当な容器に浮かべて室温で管理しました。
ツブゲンゴロウ、各成長段階の平均日数
1-2齢 | 2-3齢 | 3齢-上陸 | 上陸-蛹化 | 蛹化-羽化 |
6-9日 | 5-7日 | 14-18日 | 4-6日 | 6-8日 |
※育成日数は、飼育水温や栄養状態などの条件で多少前後すると考えられます。また、今回は手探りの状態でのツブゲンゴロウの育成を行なったため、育成日数にばらつきがあるので参考程度に見てください。
ツブゲンゴロウ、幼虫の飼育方法
幼虫の飼育容器
幼虫の飼育には、100円ショップで購入したお弁当用のマヨネーズカップ(直径4×高さ2.5センチ)を使用しました。
カップには、汲み置きした水道水を水深5ミリ程度入れています。幼虫の飼育には、フタは使用していません。
ゲンゴロウ類の幼虫は共食いすることが知られているため、小さなカップ等で個別飼育を行いました。
幼虫のエサ
幼虫のエサには、成長段階に合わせてアルテミアの孵化幼生と解凍した冷凍赤虫の2種類を使用しました。
エサやりの頻度は、朝夕各1回、少し食べ残しがでるぐらい多めに与えました。
孵化幼虫(1齢幼虫)から2齢幼虫の途中までは、アルテミアの孵化幼生を与えました。
アルテミアを与えるとすぐに反応したので、自然下でも小型のプランクトンなどを捕食していると思われます。
アルテミアの給餌は、赤虫を食べるようになったら終了しても大丈夫です。
2齢幼虫の途中からは市販の冷凍赤虫を併用し、3齢幼虫は赤虫だけで育成を行いました。
赤虫を食べるようになると育成が楽になります。1齢幼虫も小さな赤虫を選んで与えると摂餌する個体がいました。
水換え
水換えは、スポイトを用いて汲み置きした水道水で毎日、ほぼ全量を夕方に1回行いました。
成虫同様、飼育水の汚れやにおいがあるときはこまめに水換えが必要です。
水温と光条件
幼虫も成虫同様、室温管理と窓からの自然光のみで育成しました。
ツブゲンゴロウ、孵化幼虫
孵化幼虫はとても小さく、体長は2ミリ以下。
ツブゲンゴロウ、2齢幼虫
1齢幼虫は6-9日ほどで脱皮をしました。体長は約4ミリ。
ツブゲンゴロウ、3齢幼虫
2齢幼虫は5-7日ほどで脱皮しました。成長が進むと体色が、徐々に緑色に変化してきます。
また、3齢幼虫になれば赤虫だけで育成できます。
写真の個体は上陸直前の幼虫です。体色の緑色が濃くなり、透けて見える消化管の前半部分もほぼ空です。この状態になれば上陸のタイミングです。
3齢幼虫は14-18日で強制上陸させました。
ツブゲンゴロウ、強制上陸
強制上陸にも幼虫の飼育に使用しているマヨネーズカップを使いました。
カップには、水道水であらかじめ加湿しておいたピートモスを1/3程度入れています。そこに幼虫を強制上陸させると、しばらく歩き回ったあと、アゴを器用に使って土を集め、壁や天井を作り土繭を完成させます。
土繭を作る様子は観察していてとても面白いですよ。
ピートモスについて
ピートモスは、ホームセンターの園芸コーナー等で購入できます。
水道水で加湿したピートモスは、軽く手で絞って水が落ちる程度の状態のものを使用しています。
上陸させた幼虫が蛹室をなかなか作らない時は、ピートモスの水分量があっていない可能性があるので、状況によって水分量を調整してください。
ツブゲンゴロウ、蛹化
強制上陸させた3齢幼虫は、4-6日で蛹化していました。上陸させた幼虫と同じように、蛹もきれいな緑色をしています。美しいですね。
写真は、観察のために蛹室の天井を取り除いています。
ツブゲンゴロウ、羽化
蛹化してから6-8日ほどで羽化しました。写真の個体は羽化直後で、まだ白い姿を観察できました。
ツブゲンゴロウは、全国的に減少傾向にある小型のゲンゴロウです。今回は手探りの状態で繁殖に取り組んだため、育成日数には各個体でばらつきがみられる結果になりました。
本繁殖がツブゲンゴロウや同属のゲンゴロウ類の繁殖の参考に少しでもなればうれしいです。