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マルガタゲンゴロウを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。
本記事では、マルガタゲンゴロウの簡易的な飼い方や卵の産ませ方、幼虫の育成方法についてまとめてみました。
また、今回の繁殖では産卵から羽化まで育成できましたが、新成虫の体サイズが小型のものばかりでした。
おそらく幼虫育成において栄養が不足していたと考えられます。それらを踏まえて本記事を参考にしてください。
分類:ゲンゴロウ科マルガタゲンゴロウ属
和名:マルガタゲンゴロウ
学名:Graphoderus adamsii
体長12〜15ミリのゲンゴロウのなかま。背面には黒色の小さな斑点があり、とても美しい見た目をしている。
田んぼやため池に生息しているが、各地で激減傾向にある。幼虫は5月から8月頃に確認されている。
特定第二種国内希少野生動植物種に指定されている。
マルガタゲンゴロウの繁殖に取り組んだ時期
今回、マルガタゲンゴロウの繁殖に取り組んだのは6月から7月です。
マルガタゲンゴロウ、成虫の飼育方法
日々のメンテナンスや採卵のしやすさなど、繁殖に重点を置いた簡易的なマルガタゲンゴロウの飼育方法をご紹介します。
成虫の飼育容器
成虫の飼育には、100円ショップで購入した小型プラスチックケース(17×11×8.5センチ)を使用しました。
汲み置きした水道水を水深4〜5センチ程度入れています。管理時以外は脱走防止のため、既存のフタをしています。
また、ペアリングするまでオスとメスは個別飼育しています。
成虫のエサ
成虫のエサは、毎日、市販の冷凍赤虫を適量与えました。
エサやりの頻度は、1日1〜2回程度とし、食べ残しが出ないように注意しました。
※飼育におすすめのこだわり赤虫はamazonでは販売してません
水換え
水換えは、3日に1回を目安に全量を汲み置きした水道水で行いました。
飼育水の汚れやにおいがあるときは、水換えが必要です。
水温と光条件
水温は、エアコンの設置されてない室温で管理しました。
また、専用の照明は設置せず、光条件は窓から入る自然光のみです。
産卵基質(産卵床)
マルガタゲンゴロウは、植物の組織内に産卵します。
今回の繁殖では、産卵基質としてホテイアオイ(ホテイ草)を使用しました。
マルガタゲンゴロウ、ペアリング
個別飼育していたオスをメスの容器に入れ、交尾するのを待ちました。
繁殖期であれば比較的にすぐに交尾する印象があります。
交尾後は、オスを取り出してそれぞれ個別飼育します。
オスを一緒に入れておくと、繰り返し交尾をしようとするため、メスの負担が多くなり、最悪の場合はメスが死んでしまうことがあります。
また、落ち着いて産卵することができず、採卵数に影響が出ることもあります。
オスとメスの見分け方
マルガタゲンゴロウの雌雄の判別は、オスの前肢にある吸盤で簡単に見分けることができます。
メスの前肢には吸盤はありません。
マルガタゲンゴロウ、産卵のさせ方
交尾確認後、メスの容器には産卵用の小さなホテイアオイを1株入れておきます。
マルガタゲンゴロウは、ホテイアオイのスポンジ状の茎や子株をつけるランナー部分をかじって穴をあけて産卵します。
そのため、産卵したホテイアオイにはかじられた小さな痕(産卵痕)が観察できます。
産卵痕を観察しながら3日を目安に新しいホテイアオイに交換して、採卵を行いました。
採卵したホテイアオイは、汲み置きした水道水を入れた適当なサイズの容器に入れ、孵化まで管理します。
メスの栄養状態や産卵基質の状態でも変わりますが、1日メス1個体を飼育する容器に入れて置いた産卵床から多いときで29個体の孵化を観察したことがあります。
マルガタゲンゴロウ、各成長段階の育成日数
卵-孵化 | 1-2齢 | 2-3齢 | 3-上陸 | 上陸-蛹化 | 蛹化-羽化 |
約4日 | 約4日 | 約5日 | 約12日 | 約4日 | 約3日 |
※育成日数は、飼育水温や栄養条件などで多少前後すると考えられます。
マルガタゲンゴロウ、幼虫の飼育方法
今回の繁殖で、幼虫の育成に用いたものなどを参考までに紹介します。
幼虫の飼育容器
幼虫の飼育には、100円ショップで購入したお弁当用のマヨネーズカップ(直径4×高さ2.5センチ)を使用しました。
カップには、汲み置きした水道水を水深5ミリ程度入れています。
幼虫の飼育には、上陸させるまでフタは使用していません。
マヨネーズカップのほかにも、小型のタッパーなどでも代用できます。
幼虫は下の写真のように共食いをよくするため、個別飼育する必要があります。
幼虫のエサ
幼虫のエサは、1齢幼虫にはミジンコを与え、2齢幼虫以降はミジンコから徐々に市販の冷凍赤虫に切り替えていきました。
ミジンコは、野外から採集してきたものを与えていますが、ミジンコ以外の生きものが混ざらないように注意しました。
特にカイミジンコは、幼虫が脱皮するときなどに逆に襲ってしまうことがあるので要注意です。
冷凍赤虫は解凍後、キッチペーパー上で赤虫1本1本の表面に残った水分をふき取って、水面に浮かべるようにして与えるのがポイントです。
エサやりの頻度は、1日1回とし、ミジンコは食べ残しが少し出るぐらい多めに、赤虫は幼虫1個体につき2〜3本、成長に合わせて与えました。
エサの量で幼虫の成長具合が変わるかと思いますが、エサのやりすぎで急激な水質変化を起こしたり、水面の汚れで呼吸できずに死んでしまうことがあったため、私は夕方に給餌し、翌朝に残餌回収と水換えをするサイクルにしました。
水換え
水換えは、毎朝1回、汲み置きした水道水で全量を交換しました。
成虫同様、飼育水の汚れやにおいがあるときはこまめに水換えする必要があります。
また、容器が汚れてぬめりがあるときは、新しい容器に幼虫を入れ替えて清潔な状態をなるべく保つようにしました。
水温と光条件
幼虫も成虫同様、室温管理と窓からの自然光のみで育成しました。
マルガタゲンゴロウ、孵化幼虫
飼育水温にもよりもますが、産卵から約4日で孵化しました。孵化幼虫の体長は約6ミリ。
一斉に孵化し、しばらくすると共食いがはじまるため、早めに幼虫を回収して個別飼育する必要があります。
また、マルガタゲンゴロウの幼虫は、とにかく泳ぎ回るちょっと変わった幼虫です。
泳ぎながらミジンコをどんどん捕食していきます。観察していて面白いですよ。
マルガタゲンゴロウ、2齢幼虫
1齢幼虫は、約4日で脱皮をして2齢幼虫になりました。脱皮直後の体長は約11ミリ。
エサはミジンコと水面に浮かべた赤虫を与え、赤虫への反応が良くなった時点でミジンコの給餌はやめました。
本記事とは別に繁殖させたときは、赤虫以外にも水面に浮かべた孵化直後のコオロギも捕食しました。
今回の観察では、慣れてくると容器に沈んだ赤虫でも摂餌するようになりました。
マルガタゲンゴロウ、3齢幼虫
2齢幼虫は、約5日で脱皮をして3齢幼虫になりました。脱皮直後の体長は約17ミリ。
3齢幼虫には赤虫のみを与えましたが、よく摂餌していました。
また、飼育容器が少し狭そうだったので、もう少し大きなものに変更した方が良いと思いました。
マルガタゲンゴロウ、上陸直前の幼虫
3齢幼虫は約12日で強制上陸させました。
上陸直前の幼虫は、エサを食べなくなり、透けて見えていた消化管の前半部分がほぼ空になっています。
この状態が上陸のタイミングです。
マルガタゲンゴロウ、上陸方法
上陸にも幼虫の飼育に使用しているマヨネーズカップを使用し、カップには水道水であらかじめ加湿しておいたピートモスを2/3程度入れています。
その上にマルガタゲンゴロウの幼虫を強制上陸させました。
上陸後は脱走させないためにカップにフタをする必要があります。
ピートモスについて
ピートモスは、ホームセンターの園芸コーナー等で購入できます。
水道水で加湿したピートモスは、軽く手で絞って水が落ちる程度の状態のものを使用しています。
上陸させた幼虫がうまく蛹室を作らないときは、ピートモスの水分量があっていない可能性がるので、状況を見て水分量を調整してください。
マルガタゲンゴロウ、蛹化
強制上陸させてから約4日で蛹化していました。
土を掘って様子をそっと観察しています。
マルガタゲンゴロウ、羽化
蛹化してから約3日で羽化していました。羽化直後の姿は透明感もあり美しすぎます。
冒頭にも書きましたが、今回、繁殖させて育成した新成虫はどれも小型のものばかりでした。
それにはいろいろな要因が考えられますが、一つは与えたエサでは栄養不足なのではないかと思います。
ミジンコや赤虫以外のエサも今後試して育成してみる必要があります。ボウフラとか食べそうですが、飼育下だと管理が大変そうですね‥。
水中を泳ぎ回るちょっと変わったの幼虫なので野外ではどんなものを捕食しているのかも気になります。
さて、今回繁殖に取り組んだマルガタゲンゴロウは、野外では減少傾向にある種類です。
また、2023年からマルガタゲンゴロウは「特定第二種国内希少野生動植物種」に指定されており、販売・頒布目的の捕獲・譲渡が禁止されています。
研究目的や趣味の飼育などは規制対象外ですが、飼育のために野外から採集するときは、獲りすぎに注意し節度をもって行うように心がけましょう。
本記事がマルガタゲンゴロウや近いゲンゴロウ類の繁殖の参考になればうれしいです。