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キベリマメゲンゴロウを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。
本記事では、飼育に関する情報が少ないキベリマメゲンゴロウの成虫の飼い方や産卵のさせ方、幼虫の育成方法についてまとめてみました。
分類:ゲンゴロウ科モンキマメゲンゴロウ属
和名:キベリマメゲンゴロウ
学名:Platambus fimbriatus
体長6.5〜8ミリ程度の小型種。やや細長い楕円形の体で、上翅には黄褐色の美しい模様があります。
水がきれいな流水環境を好み、幼虫は晩秋〜春に見られます。
キベリマメゲンゴロウの繁殖に取り組んだ時期
今回、キベリマメゲンゴロウの繁殖に取り組んだのは1月から4月頃です。
前年の6月に野外採集してきた成虫を親にしました。
キベリマメゲンゴロウ、成虫の飼育方法(簡易版)
日々のメンテナンスや採卵のしやすさなど、繁殖に重点を置いた簡易的なキベリマメゲンゴロウの飼育方法をご紹介します。
成虫の飼育容器
成虫の飼育には、100円ショップで購入した小型タッパー(11.5×8×5センチ)を使用しました。
汲み置きした水道水を水深1.5〜2センチ程度入れ、管理時以外は脱走防止のため、既存のフタ(通気用の小さな孔を開けたもの)をしています。
また、甲羅干しができるように鉢底ネット(網目約2ミリ)を適当なサイズにカットし、写真のように山折にして設置しました。
成虫は、雌雄が混ざった状態で複数飼育しました。
成虫のエサ
成虫のエサは、毎日、市販の冷凍赤虫を適量与えました。
エサやりの頻度は、1日1回程度とし、食べ残しが出ないように注意しました。
水換え
水換えは、2日に1回を目安に全量を汲み置きした水道水で行いました。
飼育水の汚れやにおいがあるときは、水換えが必要です。
水温と光条件
水温は、エアコンの設置されてない室温で管理しました。
1月は6〜15℃、2月は7〜12℃、3月は7〜17℃、4月は13〜21℃でした。
また、専用の照明は設置せず、光条件は窓から入る自然光のみです。
産卵基質(産卵床)
特に使用しませんでした。
同属のモンキマメゲンゴロウを繁殖させたときも、同様の飼育方法で行い、容器の壁面や鉢底ネットの表面に産卵していました。
キベリマメゲンゴロウ、産卵
成虫を6月から飼育し始めてからずっと産卵を待ちましたが、はじめて産卵を確認できたのは翌年の1月中旬頃でした。
冬場は低水温が続きますが、産卵する少し前から気温の上昇が見られ、その影響で産卵のスイッチが入ったのではないかと考えられました。その後は、継続して産卵していました。
粘着性のある卵を容器の壁面に複数産みつけることが多かったため、採卵は成虫を別の容器に移すことで行いました。
容器ごと採卵した卵は、一度、成虫の食べ残した餌等を回収し、汲み置きした水道水を使って水換えし、孵化まで管理しました。
キベリマメゲンゴロウ、各成長段階の平均日数
孵化 | 1-2齢 | 2-3齢 | 3齢-上陸 | 上陸-蛹化 | 蛹化-羽化 |
約27 | 約16 | 約12 | 約19 | 約10 | 約11 |
※育成日数は、飼育水温や栄養条件などの条件で多少前後すると考えられます。また、今回は確認したサンプル数が少ないため、日数はあくまで参考程度にみてください。
キベリマメゲンゴロウ、幼虫の飼育方法
今回の繁殖で、幼虫の育成に用いたものなどを参考までに紹介します。
幼虫の飼育容器
幼虫の飼育には、下記のものを使用しました。
孵化幼虫には、採卵した容器をそのまま使用しました。
孵化幼虫をスポイトで別容器に移そうとすると、幼虫が水面に浮いて沈めなくなることがあり、上の写真のように共食い覚悟で幼虫の複数飼育を行いました。孵化日がほぼ一緒なためか、今回の繁殖では共食いは見られませんでした。
2齢幼虫以降は、100円ショップで購入したマヨネーズカップ(直径4×高さ2.5センチ)を使用しました。各カップに脱皮した2齢幼虫を1個体入れ、個別飼育しました。
カップには、汲み置きした水道水を水深5ミリ程度入れています。
幼虫の飼育には、上陸させるまでフタは必要ありません。
幼虫のエサ
幼虫のエサは、アルテミアの孵化幼生と市販の冷凍赤虫を使用しました。
孵化幼虫には、最初アルテミアの孵化幼生を、孵化後5日目頃から様子をみて冷凍赤虫を与えました。
孵化から数日間は、冷凍赤虫にほとんど反応しなかったので、アルテミアの孵化幼生のような微小なエサがあると安心です。野外では極小の川虫やケンミジンコなどを食べているのでしょうか。
赤虫を摂餌するようになってからは、アルテミアは与えていません。
エサやりの頻度は、朝夕1回、食べ残しが出ない程度に少量ずつ与えました。
水換え
水換えは、スポイトで食べ残し等の汚れを取り除きながら行いました。
前述した通り、孵化幼虫は一度にたくさんの水を換える(新しい水に入れる)と浮いてしまうことがあったため、汚れをスポイトで吸って減った分だけを補給水しました。
マヨネーズカップでの個別飼育に切り替えた2齢幼虫以降は、スポイトを用いて汲み置きした水道水で毎日、ほぼ全量を1日1回交換しました。
成虫同様、飼育水の汚れやにおい、水面に油膜があるときはこまめに水換えする必要があります。
水温と光条件
幼虫も成虫同様、室温管理と窓からの自然光のみで育成しました。
キベリマメゲンゴロウ、孵化幼虫
産卵から約27日で孵化しました。頭部に黒い模様があります。
スポイトで別の容器(新しい水)に移そうとすると沈めなくなることがあり注意が必要。
キベリマメゲンゴロウ、2齢幼虫
孵化幼虫は約16日で脱皮しました。
容器を揺らすと写真のように体を丸めてしばらく動かなくなるのを確認しました。おそらく擬死行動と思われます。
流水環境にくらす同属のモンキマメゲンゴロウの幼虫でも同じ行動を観察しています。面白いですね。
丸まって身を守っているのか、それとも流水に身をまかせて転がって下流に流されていくのか。気になりますね。
ちなみに連続して何度も容器を揺らしていると擬死行動をしなくなります。
キベリマメゲンゴロウ、3齢幼虫
2齢幼虫は約12日で脱皮しました。頭部の模様が特徴的で、腹部も幅広いです。
キベリマメゲンゴロウ、上陸直前の幼虫
3齢幼虫は約19日で強制上陸させました。
エサを食べなくなり、写真の幼虫のように消化管の前半部分が空っぽになると上陸のタイミングです。
この頃の幼虫は、カップの壁を登って水から出ようとする行動もみられます。
キベリマメゲンゴロウ、上陸方法
上陸にも幼虫と同じマヨネーズカップを使用しました。カップには、水道水であらかじめ加湿しておいたピートモスを半分程度まで入れ、その上に幼虫をのせます。
湿度調整や脱走防止のため、カップの既存のフタをして管理します。
ピートモスについて
ピートモスは、ホームセンターの園芸コーナー等で購入できます。
水道水で加湿したピートモスは、軽く手で絞って水が落ちる程度の状態のものを使用しています。
上陸させた幼虫がうまく蛹室を作らないときは、ピートモスの水分量があっていない可能性がるので、状況を見て水分量を調整してください。
キベリマメゲンゴロウ、蛹化
上陸させた幼虫は約10日で蛹化しました。
蛹室の中をそっと観察して蛹化のタイミングを見てみました。
キベリマメゲンゴロウ、羽化
蛹化してから約11日で羽化していました。
羽化直後は白くて美しいです。徐々に色付いていく様子も神秘的です。
キベリマメゲンゴロウ、新成虫
キベリマメゲンゴロウは、流水性のゲンゴロウで私の住んでいる地域ではあまり見かけない種類です。そのため今回がはじめての飼育でした。
繁殖時期が晩秋から春の低水温のため、今回の繁殖では、産卵から羽化までに約3ヶ月かかりました。根気強く飼育や観察をする必要がありますが、冬期にもゲンゴロウ類の繁殖観察をしてみたい方は挑戦してみてはいかがでしょうか。
繁殖や育成方法にあまり情報がないゲンゴロウ類はほかにもたくさんいます。本記事がキベリマメゲンゴロウや同属のゲンゴロウ類の繁殖の参考になればうれしいです。