【飼育方法】キベリクロヒメゲンゴロウを繁殖させてみた

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キベリクロヒメゲンゴロウを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。

本記事では、飼育に関する情報が少ないキベリクロヒメゲンゴロウの飼い方や産卵のさせ方、卵や幼虫の育成方法などについてまとめてみました。

キベリクロヒメゲンゴロウ 解説

分類:ゲンゴロウ科クロヒメゲンゴロウ属

和名:キベリクロヒメゲンゴロウ

学名:Ilybius apicalis

体長8〜10ミリ程度のゲンゴロウ。背面側縁は黄褐色で縁取られいる。

抽水植物があるため池などの止水環境で見られる。幼虫は冬から早春に確認されている。

キベリクロヒメゲンゴロウの繁殖に取り組んだ時期

今回、キベリクロヒメゲンゴロウの繁殖に取り組んだのは10月から翌年5月です。

キベリクロヒメゲンゴロウ、成虫の飼育方法

日々のメンテナンスや採卵のしやすさなど、繁殖に重点を置いた簡易的なキベリクロヒメゲンゴロウの飼育方法を紹介します。

成虫の飼育容器

成虫の飼育には、100円ショップで購入した小型のタッパー(11.5×8×4.5センチ)を使用し、園芸用の鉢底ネット(13×3.5センチ)を山折りにして設置しました。

鉢底ネットの両端は下の写真のように1センチ程度折り曲げて安定させています。

鉢底ネットの役割は、成虫の足場や甲羅干しの陸場用として入れています。

タッパーには、汲み置きした水道水を水深2.5〜3センチ程度入れ、鉢底ネットが完全に水没しないように調整しました。

また、脱走防止のためフタは必要です。既存のフタでは気密性が高く蒸れやすいので、状況をみて小さな穴を複数開けることをおすすめします。

成虫のエサ

成虫のエサは、市販の冷凍赤虫を解凍して、1日1回適量与えました。

小型の種類なので食べ残しが出ないように注意が必要です。

※飼育におすすめのこだわり赤虫はamazonでは販売してません

上手く産卵させるには、成虫の栄養状態も関わってくると考えられるので、よく観察しながらエサの量を調整するのがポイントです。

水換え

小型のタッパーを使った簡易的な飼育方法なので、定期的な水換えは必要です。

目安として3日に1回程度、全量を汲み置き水を用いて行いました。

飼育水の汚れやにおいがあるとき、また、食べ残しが多いときなどはこまめに水換えが必要です。

水温と光条件

水温は、エアコンが設置されていない3月から5月の室温で管理しました。

光条件は、窓から入る自然光のみとし、専用の照明は設置しませんでした。

産卵基質(産卵床)

キベリクロヒメゲンゴロウの産卵基質が分からなかったため、今回は足場用に入れた鉢底ネットと活性炭を容器に沈めて産卵基質にしてみました。

活性炭は、アクアリウム用の水質調整に使用するものを購入して使用しました。

ちなみに産卵基質の表面に産卵すると予想したものです。

キベリクロヒメゲンゴロウ、産卵のさせ方

今回のは雌雄の判別をせず、成虫を複数個体入れてペアリングを試みました。

交尾するキベリクロヒメゲンゴロウ

交尾後は、雌雄を別々にして個別飼育しました。

活性炭に産み付けられた、キベリクロヒメゲンゴロウの卵

交尾後しばらくすると、活性炭の表面に産卵しているのを確認できました。

どうやら基質の表面に産卵する種類で合っていたようです。野外では、落ち葉や石、植物などの表面に産卵しているのでしょうか。

採卵は、卵がついた活性炭を別のタッパーに移して行い、室温で管理しました。

発生が進むキベリクロヒメゲンゴロウの卵

キベリクロヒメゲンゴロウ、各成長段階の平均日数

1-2齢2-3齢3齢-上陸上陸-蛹化蛹化-羽化
12.7日7.3日13.8日91.7日51.0日13.0日

※育成日数は、飼育水温や栄養条件などで前後すると考えられます。

キベリクロヒメゲンゴロウ、幼虫の飼育方法

ゲンゴロウ類の幼虫は、共食いすることが知られているため個別飼育をおすすめします。

幼虫の飼育容器

幼虫の飼育には、100円ショップで購入したお弁当用のマヨネーズカップ(直径4×高さ2.5センチ)を使用しました。

カップには、汲み置きした水道水を水深5ミリ程度入れています。幼虫の飼育には、上陸させるまでフタは使用していません。

幼虫のエサ

エサは、アルテミアの孵化幼生と市販の冷凍赤虫を成長段階に合わせて使用しました。

孵化幼虫から2齢幼虫の途中まではアルテミアを与え、その後は冷凍赤虫のみです。

エサやりの頻度は、朝夕各1回行い、少し食べ残しが出るぐらい多めに与えました。

水換え

水換えは、スポイトを用いて汲み置きした水道水で毎日、ほぼ全量を夕方に1回行いました。

スポイトで幼虫を吸わないように注意してください。

成虫同様、飼育水の汚れやにおいがあるとき、また、食べ残しが多いときなどはこまめに水換えが必要です。

また、脱皮中や脱皮直後の幼虫がいる時は、しばらく時間を空けてから水換えをしました。

水温と光条件

幼虫の飼育水温は成虫同様、室温で管理し、光条件も窓から入る自然光のみです。

キベリクロヒメゲンゴロウ、孵化幼虫

キベリクロヒメゲンゴロウは、産卵から平均12.7日で孵化しました。孵化日数は最短で12日、最長で13日でした。

孵化幼虫の体長は平均3.1ミリ。

孵化後しばらくするとアルテミアの孵化幼生を捕食しました。

アルテミアを捕食して消化管がオレンジ色に透けて見えるキベリクロヒメゲンゴロウ1齢幼虫

野外では小さなプランクトンなどを捕食しているのでしょうか。

孵化後6日目。からだが伸びて脱皮間近。

キベリクロヒメゲンゴロウ、2齢幼虫

1齢幼虫は平均7.3日ほどで脱皮をして2齢幼虫になりました。日数は最短で7日、最長で8日でした。

2齢幼虫の体長は平均5.7ミリ。

脱皮後しばらくは冷凍赤虫に反応を示しませんでしたが、アルテミアと併用して与えていると途中から食べるようになりました。

今回、与えた赤虫が大きかったのかもしれない。

キベリクロヒメゲンゴロウ、3齢幼虫

2齢幼虫は平均13.8日で脱皮をして3齢幼虫になりました。日数は最短で10日、最長で17日でした。

3齢幼虫の体長は平均10.1ミリ。

3齢に脱皮してから28日経過。赤虫を摂餌するが食が細い。

水温の低下も影響しているかもしれない。

3齢に脱皮してから45日経過。エサは食べたり、食べなかったりムラがありました。食べても少量。

キベリクロヒメゲンゴロウ、上陸のさせ方

3齢幼虫は平均91.7日で強制上陸させました。強制上陸までの日数は最短で59日、最長で118日でした。

飼育した水温が育成日数のばらつきに影響しているかもしれません。

上陸直前の幼虫は、透けて見えていた消化管がほとんど見えなくなり、この状態を上陸のタイミングとしました。

上陸直前の幼虫の体長は約13ミリ。

幼虫の育成日数がとても長く、食も細いことから上陸のタイミングが他のゲンゴロウ類と比べて分かりにくいと感じました(観察力が足らないのも原因かも…)

上陸にも幼虫の飼育に使用しているマヨネーズカップを使用し、カップには水道水であらかじめ加湿しておいたピートモスを半分程度入れています。

その上にキベリクロヒメゲンゴロウの幼虫を強制上陸させました。

上陸後は脱走させないためにカップにフタをする必要があります。

ピートモスについて

ピートモスは、ホームセンターの園芸コーナー等で購入できます。

水道水で加湿したピートモスは、軽く手で絞って水が落ちる程度の状態のものを使用しています。

上陸させた幼虫が蛹室をなかなか作らない時は、ピートモスの水分量があっていない可能性があるので、状況によって水分量を調整してください。

キベリクロヒメゲンゴロウ、蛹化

強制上陸から平均51.0日ほどで蛹化を確認しました。

今回は、蛹化のタイミングを確認するため、蛹室の中をそっと観察しています。

蛹化までも期間が長いのは飼育環境が合っていなかったのだろうか。

湿らせたキムワイプ上で蛹化したキベリクロヒメゲンゴロウ幼虫

ちなみに、本記事とは別に繁殖させたキベリクロヒメゲンゴロウの幼虫を湿らせたキムワイプに強制上陸させてみても蛹化しました。

キベリクロヒメゲンゴロウ、羽化

蛹化した個体は、平均13.0日で羽化していました。羽化直後は真っ白ですが、徐々に黒っぽく変化してきます。

湿らせたキムワイプ上でも下の写真のようにちゃんと羽化していました。

湿らせたキムワイプ上で羽化したキベリクロヒメゲンゴロウ

キベリクロヒメゲンゴロウは、野外で詳細な生活史について明らかになっていないことがまだ多くあるようです。

今回は卵から羽化まで平均184.7日というとても長い結果になりました。最短日数は162日、最長は209日でした。

野外でも冬から早春に幼虫が確認されている種なので、秋からキベリクロヒメゲンゴロウの繁殖に取り組む方は、育成日数がとても長くなることを覚悟しておく必要がありますね。

育成日数の長さに少し疲れましたが、とても良い経験をすることができました。

本記事が、キベリクロヒメゲンゴロウの繁殖や同属のゲンゴロウ類の繁殖の参考になればうれしいです