【飼育方法】シマゲンゴロウを繁殖させてみた

「この記事はPRを含みます」

シマゲンゴロウを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。

本記事では、シマゲンゴロウ成虫の簡易的な飼い方や卵の産ませ方、幼虫の育成方法についてまとめてみました。

シマゲンゴロウ

分類:ゲンゴロウ科シマゲンゴロウ属

和名:シマゲンゴロウ

学名Hydaticus bowringii

体長13〜14ミリの中型のゲンゴロウです。黒い背面には黄色の縦じまと1対の斑紋があります。

水がきれいで、植物が豊富な止水域に生息し、幼虫は5〜7月頃に確認されています。

シマゲンゴロウの繁殖に取り組んだ時期

今回、シマゲンゴロウの繁殖に取り組んだのは5月から6月です。

シマゲンゴロウ、成虫の飼育方法(簡易版)

日々のメンテナンスや採卵のしやすさなど、繁殖に重点を置いた簡易的なシマゲンゴロウの飼育方法をご紹介します。

成虫の飼育容器

成虫の飼育には、100円ショップで購入した小型プラスチックケース(17×11×8.5センチ)を使用しました。汲み置きした水道水を水深4〜5センチ程度入れています。管理時以外は脱走防止のため、既存のフタをしています。

また、ペアリングするまでオスとメスは個別飼育しています。

成虫のエサ

成虫のエサは、毎日、市販の冷凍赤虫を適量与えました。

エサやりの頻度は、1日1〜2回程度とし、食べ残しが出ないように注意しました。

※飼育におすすめのこだわり赤虫はamazonでは販売してません

水換え

水換えは、2日に1回を目安に全量を汲み置きした水道水で行いました。

飼育水の汚れやにおいがあるときは、水換えが必要です。

水温と光条件

水温は、エアコンの設置されてない5月の室温で管理し、16〜23℃程度でした。

また、専用の照明は設置せず、光条件は窓から入る自然光のみです。

産卵基質(産卵床)

シマゲンゴロウは、植物の表面などに産卵します。

今回の繁殖では、産卵基質として水面に浮葉をひろげるトチカガミを使用しました。

シマゲンゴロウ、ペアリング

個別飼育していたオスをメスの容器に入れると、すぐに交尾がはじまりました。

交尾終了後は、再度、オスを取り出してそれぞれ個別飼育します。オスを一緒に入れておくと、繰り返し交尾をしようとするため、メスの負担が多くなるほか、落ち着いて産卵することができません。また、最悪の場合はメスが死んでしまうことがあります。

オスとメスの見分け方

前肢が吸盤状のシマゲンゴロウのオス

シマゲンゴロウの雌雄の判別は、オスの前肢にある吸盤で簡単に見分けることができます。メスの前肢には吸盤はありません。

前肢が観察しにくいときは、チャック付きポリ袋に入れて腹側をじっくり観察すると見分けやすいです。

シマゲンゴロウ、産卵のさせ方

交尾確認から数日後、メスの容器に入れておいた産卵床のトチカガミの浮葉の裏を観察すると、黄色の卵を複数産みつけていました。よく見ると卵はゼリー状のもので覆われています。卵の長径は2.8ミリほど。

卵が産みつけられたトチカガミを取り出して、汲み置きした水道水を入れたタッパーに入れておくと採卵から約6日で孵化がはじまりました!

今回行った繁殖では、メス1個体から一晩で、30粒以上も採卵できました。

メスの栄養状態や産卵床の大きさが適していると一度の産卵数が多くなるのかもしれません。少ないときは一晩で1粒のこともあります。

シマゲンゴロウ、各成長段階の平均日数

孵化1-2齢2-3齢3齢-上陸
6.05.06.010.0

※育成日数は、飼育水温や栄養条件などの条件で多少前後すると考えられます。

シマゲンゴロウ、幼虫の飼育方法

今回の繁殖で、幼虫の育成に用いたものなどを参考までに紹介します。

幼虫の飼育容器

幼虫の飼育には、100円ショップで購入したお弁当用のマヨネーズカップ(直径4×高さ2.5センチ)とプラスチックカップ(直径5.6×高さ3.5センチ)を使用しました。

カップには、汲み置きした水道水を水深5ミリ程度入れています。幼虫の飼育には、上陸させるまでフタは使用しませんでした。

今回は成長に合わせて飼育容器の大きさを変えました。孵化幼虫から3齢幼虫に脱皮するまでは、マヨネーズカップを使用しましたが、3齢幼虫にはマヨネーズカップが小さかったため、プラスチックカップに変更しています。

マヨネーズカップ(脱皮直後の3齢幼虫)
プラスチックカップ(成長した3齢幼虫)

今回は、飼育容器を置くスペースがあまりなかったため、省スペースですむマヨネーズカップを途中まで使いましたが、容器が大きいほうが水が汚れにくく、水質は安定します。

幼虫のエサ

幼虫のエサは、各齢期すべて市販の冷凍赤虫のみを使用しました。エサやりの頻度は、朝夕1回、食べ残しが少し出るぐらい多めに与えました。

冷凍赤虫だけでも成虫まで育成できますが、赤虫だけでは2齢幼虫以降に死ぬことが何度かありました。

野外ではオタマジャクシを好んで捕食するといった観察事例もあるので、もしかすると赤虫だけでは栄養面で足らないものがあるのかもしれません。

オタマジャクシを捕食するシマゲンゴロウ幼虫

関連記事はこちら

【観察】シマゲンゴロウ幼虫がオタマジャクシを捕食するのを観察してみた

水換え

水換えは、スポイトを用いて食べ残し等の汚れを取り除き、汲み置きした水道水で毎日、ほぼ全量を朝夕各1回交換しました。

成虫同様、飼育水の汚れやにおいがあるときはこまめに水換えする必要があります。

水温と光条件

幼虫も成虫同様、室温管理と窓からの自然光のみで育成しました。

シマゲンゴロウ、孵化幼虫

産卵床のトチカガミに産みつけられた卵は、平均6日で孵化しました。孵化幼虫の体長は約9ミリ。

孵化幼虫は、からだが固まると入れて置いた赤虫を摂餌するようになります。冷凍赤虫にも反応します。反応しないときは、赤虫をピンセットでかるく動かしてやると摂餌しました

シマゲンゴロウ、2齢幼虫

平均6日ほどで脱皮をして2齢幼虫になりました。脱皮直後の平均体長は16.8ミリほど。

シマゲンゴロウ、3齢幼虫

平均10日ほどで脱皮をして3齢幼虫になりました。脱皮直後の平均体長は25.7ミリほど。

シマゲンゴロウ、上陸直前の幼虫

今回は強制上陸させました。

上陸直前の幼虫は、透けて見えていた消化管の前半部分がほぼ空になっています。この状態が上陸のタイミングです。

シマゲンゴロウ、上陸方法

上陸容器には3齢幼虫と同じプラスチックカップを使用しました。カップには、水道水であらかじめ加湿しておいたピートモスを深さ5ミリ程度入れ、その上に幼虫をのせます。

ピートモスについて

ピートモスは、ホームセンターの園芸コーナー等で購入できます。

水道水で加湿したピートモスは、軽く手で絞って水が落ちる程度の状態のものを使用しています。

上陸させた幼虫がうまく蛹室を作らないときは、ピートモスの水分量があっていない可能性がるので、状況を見て水分量を調整してください。

シマゲンゴロウ、土繭(蛹室)

強制上陸させると約1日で写真のような球状の蛹室(土繭)を土の表面に作りました。土繭の直径は2〜2.5センチほど。

土の中に潜らず、土の表面で土繭を作るので、観察していてとても面白いですよ!

シマゲンゴロウ、蛹化

土繭の中をそっと観察してみると、ちゃんと蛹化していました。

シマゲンゴロウ、羽化

土繭の中で無事に羽化していました。新成虫の体長は約14.5ミリ。

メスの方が大きな個体が多かったです。

シマゲンゴロウ、新成虫

シマゲンゴロウは、見た目の美しさからゲンゴロウの中でも人気が高い種類のひとつです。

かつては身近なゲンゴロウとして生息していましたが、近年、減少しています。飼育のために野外から採集するときは、獲りすぎに注意しましょう。

本記事がシマゲンゴロウや同属のゲンゴロウ類の繁殖の参考になればうれしいです。

コメントを残す