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アメンボを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。
本記事では、アメンボ(ナミアメンボ)の簡易的な飼い方や卵の産ませ方、幼虫の育成方法についてまとめてみました。
分類:アメンボ科アメンボ属
和名:アメンボ(ナミアメンボ)
学名:Aquarius paludum paludum
体長11〜16ミリ程度。おもにため池や水たまりなどの止水環境に生息し、もっとも見かける機会の多いアメンボ。
捕まえるとお腹側にある臭腺から焦げたアメのような匂いを出す。
アメンボの繁殖に取り組んだ時期
今回、アメンボの繁殖に取り組んだのは9月から10月です。
アメンボ、成虫の飼育方法(簡易版)
日々のメンテナンスや採卵のしやすさなど、繁殖に重点を置いた簡易的なアメンボの飼育方法をご紹介します。
成虫の飼育容器
成虫の飼育には、プラスチックケース(26×18×15.5センチ)を使用し、汲み置きした水道水を水深3〜4センチ程度入れました。
アメンボは飛ぶことができるため、管理時以外は脱走防止のため、既存のフタをしています。
アメンボは水面で生活するため、自然界では水面に浮葉をひろげる水草などの上で休むことがあります。
今回は、水草の代わりに厚さ5ミリのプラスチックボードを、適当なサイズにカットして水面に浮かべました。また、アメンボが登りやすいように、プラスチックボードの側面を斜めに切り落としてスロープ状に加工しました。
成虫のエサ
成虫のエサは、毎日、市販の冷凍赤虫を適量与えました。
アメンボは、水中に沈んだエサは食べません。そこで水草の代わりに浮かべたプラスチックボードをエサ置き場にし、その上に解凍した赤虫を適量置いて与えました。
エサやりの頻度は、1日1回程度です。エサ置き場のプラスチックボードは食べ残しで汚れるため、毎回、水洗いが必要です。
水換え
水換えは、2日に1回を目安に全量を汲み置きした水道水で行いました。
アメンボは水面で生活するため、水面に油膜があるときは水換えが必要です。また、飼育水の汚れやにおいがあるときも同様です。
水温と光条件
水温は、エアコンの設置されてない室温で管理しました。
また、専用の照明は設置せず、光条件は窓から入る自然光のみです。
産卵基質
アメンボは、潜水して水中の植物や水際の石の表面に産卵します。
今回の繁殖では、水面に浮かべたプラスチックボードを産卵基質として代用しました。
アメンボ、ペアリング
今回は、オスとメスを同じ容器に1ペア入れて飼育を開始しました。
飼育中は定期的に交尾するのを観察できました。
オスとメスの見分け方
アメンボの雌雄の判別は、腹面から観察して腹端の違いで見分けることができます。
観察しにくいときは、チャック付きポリ袋に入れて腹側をじっくり観察すると見分けやすいですよ。
アメンボ、採卵方法
交尾を確認してからしばらくすると、産卵基質として入れておいたプラスチックボードの縁に産み付けられた複数の卵を確認できました。
採卵は卵のついたプラスチックボードごと取り出して行い、100円ショップで購入したタッパー(11.5×8×5センチ)に入れ、孵化するまで管理しました。
飼育水は汲み置きした水道水を水深2センチ程度入れています。
アメンボ、幼虫の飼育方法
今回の繁殖で、幼虫の育成に用いたものなどを参考までに紹介します。
幼虫の飼育容器
幼虫の飼育には、採卵後の管理に使用したタッパーをそのまま使用し、
4齢幼虫以降の飼育には、成虫の飼育に使用したプラスチックケース(26×18×15.5センチ)を使用しました。
どちらの容器にも、汲み置きした水道水を水深1〜2センチ程度入れています。
幼虫飼育には、容器内の蒸れを防ぐためフタは使用しませんでした。
4齢幼虫から飼育容器を変更したのは、幼虫のサイズが大きくなり容器が狭くなったことと、ジャンプして容器から飛び出すことがあったためです。
また、成虫同様、プラスチックボードを水面に浮かべて幼虫が休憩する足場やエサ置き場として使用しました。
幼虫の飼育のポイント
アメンボの幼虫は、複数飼育してもあまり共食いは見られませんが、脱皮直後や羽化直後は注意が必要です。そこで以下の点に気をつけて飼育しました。
なるべく孵化日が同じ幼虫を一緒に飼育するようにしました。孵化日があまりにも異なると脱皮のタイミングがズレるため共食いのリスクが高まります。
また、脱皮した幼虫は別容器に取り出し、なるべく同じ齢期の幼虫を一緒に飼育するように注意しました。
幼虫のエサ
幼虫のエサは、各齢期すべて市販の冷凍赤虫のみを使用しました。
成虫同様、水中に沈んだエサは食べないため、プラスチックボード上に解凍した赤虫を置いて与えました。
最初エサを食べないことがあるため、そのときは赤虫の表面の水分をキッチンペーパー等でかるくふき取り、水面に浮かせるようにして与えると摂餌します。
摂餌しないときは、これを試すだけでも幼虫の生存率が変わると思います。
エサやりの頻度は、1日1回、食べ残しが少し出るぐらい多めに与えました。
また、エサ置き場のプラスチックボードは食べ残しで汚れるため、毎回、水洗いが必要です。
水換え
水換えは、毎日、飼育容器を入れ替えて行いました。
新しい容器に汲み置きした水道水を入れておき、そこに計量スプーンなどを使って幼虫をそっと掬いとるようにして行いました。
指で生体をつまむとダメージがあるのでオススメしません。
また、成虫同様、水面に油膜等がある時はこまめに水換えします。特に幼虫が水面にくっつくような仕草や動きがない(水面をすいすいと泳げない)ときは注意が必要です。
水温と光条件
幼虫も成虫同様、室温管理と窓からの自然光のみで育成しました。
アメンボ、孵化幼虫
孵化幼虫はとても小さいですが、しばらくすると赤虫を摂餌するようになります。
生き餌など必要なく、冷凍赤虫だけで育成できるのでエサの面では安心です。
アメンボ、2齢幼虫
脱皮して徐々に大きくなります。特にあしが長くなるのがよく分かります。
アメンボ、3齢幼虫
脱皮をしてさらにあしが長くなっています。脱皮直後は体が短く見えますが、エサを食べると体も大きくなっていきます。
また、脱皮した幼虫は別容器に移し、共食いを避けるためなるべく同じ齢期の幼虫だけで育成することをオススメします。
アメンボ、4齢幼虫
左が3齢幼虫で、右が脱皮した4齢幼虫。
4齢幼虫になるとタッパーでの育成は狭く、またジャンプして容器から飛び出すことがあるので、壁面に高さのある大きめのプラスチックケースに変更します。
アメンボ、5齢幼虫
体長も1センチ程度になり、成虫に近い体形になります。
エサの食べ方も成虫と同じように、赤虫を前あしで抱えるようして食べる様子を観察できます。
アメンボ、羽化直後
羽化直後のアメンボをプラスチックボード上で見つけました。体色もまだ灰色です。
水面で羽化するかと思いましたが、こんなところでも羽化できるようです。野外でも水際近くの植物上で羽化しているのかも知れませんね。
アメンボ、羽化個体
無事に羽化しました。エサは赤虫のみを与えましたが、野外で見るアメンボの成虫とも見た目の大きさに違いはみられませんでした。
普通種であるアメンボ(ナミアメンボ)を飼育してみましたが、産卵数も多く、簡単に育成できることがわかりました。身近なところで入手もしやすいアメンボは、繁殖や観察をする初心者にもオススメの生きものです。
一方で水面の汚れには弱い生きものであることも飼育を通じて知ることできました。身近にくらし普通種のアメンボですが、環境が悪くなると普通に観察できなくなる場合があることもぜひ知ってほしいです。
本記事がアメンボ類の繁殖の参考になればうれしいです。