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ゲンゴロウを飼育下で繁殖させて幼虫を育ててみました。
本記事では、ゲンゴロウの簡易的な飼い方や卵の産ませ方、幼虫の育成方法についてまとめてみました。
分類:ゲンゴロウ科ゲンゴロウ属
和名:ゲンゴロウ(ナミゲンゴロウ、オオゲンゴロウ)
学名:Cybister chinensis
体長35〜40ミリの日本産ゲンゴロウ科の中では最大種。背面は緑色をおびた褐色で、側縁は黄褐色。
植物が豊富な止水域に生息し、かつてはため池や水田などで見られたが、環境の変化や農薬の影響などで西日本の多くの地域で絶滅している。
「特定第二種国内希少野生動植物種」に指定されている。
ゲンゴロウの繁殖に取り組んだ時期
今回、ゲンゴロウの繁殖に取り組んだのは6月から8月です。
ゲンゴロウ、成虫の飼育方法
日々のメンテナンスや採卵のしやすさなど、繁殖に重点を置いた簡易的なゲンゴロウの飼育方法を紹介します。
成虫の飼育容器
成虫の飼育には、プラスチックケース(29×19×18センチ)を使用しました。汲み置きした水道水を水深8〜10センチ程度入れています。
また、ゲンゴロウは甲羅干しをよくするため、今回は鉢底ネットを写真のように山折りにして設置しました。
管理時以外は脱走防止のため、既存のフタをしています。
また、ペアリングするまでオスとメスは個別飼育しています。
成虫のエサ
成虫のエサは、毎日、市販の冷凍赤虫をおもに与えました。
エサやりの頻度は、1日1〜2回程度とし、食べ残しが出ないように注意しました。
成虫の栄養状態が産卵数にも影響するため、冷凍のコオロギや魚の切り身などもときどき与えました。
※飼育におすすめのこだわり赤虫はamazonでは販売してません
水換え
水換えは、3日に1回を目安に全量を汲み置きした水道水で行いました。
飼育水の汚れやにおいがあるときは、水換えが必要です。
水温と光条件
水温は、エアコンの設置されてない室温で管理しました。
また、専用の照明は設置せず、光条件は窓から入る自然光のみです。
産卵基質(産卵床)
ゲンゴロウは、植物の組織内に産卵します。
今回の繁殖では、産卵基質としてホテイアオイ(ホテイ草)を使用しました。
ゲンゴロウ、ペアリング
個別飼育していたオスをメスの容器に入れ、交尾するのを待ちました。
繁殖期であれば比較的にすぐに交尾がはじまります。
交尾後は、オスを取り出してそれぞれ個別飼育します。
オスを一緒に入れておくと、繰り返し交尾をしようとするため、メスの負担が多くなり、最悪の場合はメスが死んでしまうことがあります。
また、落ち着いて産卵することができず、採卵数に影響が出ることもあります。
オスとメスの見分け方
ゲンゴロウの雌雄の判別は、オスの前肢にある吸盤で簡単に見分けることができます。
メスの前肢には吸盤はありません。
また、上翅にも雌雄で違いがあります。
オスの上翅はつるつるですが、メスには細かいしわ状の溝があります。
ゲンゴロウ、産卵のさせ方
交尾確認後、メスの容器には産卵用のホテイアオイを1〜2株入れておきます。
ゲンゴロウは、ホテイアオイのスポンジ状の茎や子株をつけるランナー部分をかじって穴をあけて産卵します。
そのため、産卵したホテイアオイはかじられた痕(産卵痕)で、ボロボロになります。
産卵痕を観察しながら3〜6日を目安に新しいホテイアオイに交換して、採卵を行いました。
産卵痕がたくさんあるときは早めに新しいものと交換するのをおすすめします。
採卵したホテイアオイは、汲み置きした水道水を入れた適当なサイズの容器に入れ、孵化まで管理します。
管理容器の水面に油膜が出るときは水換えをしておかないと、孵化した幼虫が呼吸できずに死んでしまうことがあるので注意が必要です。
容器に産み落とされたゲンゴロウの卵はどうする?
ゲンゴロウの繁殖をしていると、ときどき産卵床に上手く産めなかった卵が容器の底に落ちていることがあります。
そんな卵も優しくスポイト等で回収して、汲み置きした水道水を入れた容器に静置しておくと発生が進むことがあるのであきらめないでください。
ゲンゴロウ、各成長段階の育成日数
1-2齢 | 2-3齢 | 3-上陸 | 上陸-羽化脱出 |
6.6日 | 9.4日 | 13.9日 | 26日 |
※育成日数は、飼育水温や栄養条件などで多少前後すると考えられます。
ゲンゴロウ、幼虫の飼育方法
今回の繁殖で、幼虫の育成に用いたものなどを参考までに紹介します。
幼虫の飼育容器
幼虫の飼育には、100円ショップで購入したタッパー(小;8×7.5×4センチ、大;11.5×8×5センチ)を幼虫の成長にあわせて使用しました。
タッパー小は1〜2齢幼虫、タッパー大は3齢幼虫に使用。
タッパーのほかにも、100円ショップにある大きめのプラスチックカップなどでも代用できます。
容器には、汲み置きした水道水を水深1〜2センチ程度入れました。
幼虫の飼育には、上陸させるまでフタは使用しませんでした。
幼虫のエサ
幼虫のエサは、1齢幼虫には市販の冷凍赤虫を、2齢幼虫以降には市販の冷凍コオロギ(Mサイズ)を与えました。
エサやりの頻度は、1日1回とし、赤虫は容器の底に食べ残しが少し出るぐらい多めに、コオロギは解凍したものを1日1匹与えています。
エサの量で幼虫の成長具合が変わるかと思いますが、エサのやりすぎで急激な水質変化を起こしたり、水面の汚れで呼吸できずに死んでしまうことがあったため、私は夕方に給餌し、翌朝に残餌回収と水換えをするサイクルにしました。
水換え
水換えは、毎朝1回、汲み置きした水道水で全量を交換しました。
成虫同様、飼育水の汚れやにおいがあるときはこまめに水換えする必要があります。
また、容器が汚れてぬめりがあるときは、新しい容器に幼虫を入れ替えて清潔な状態をなるべく保つようにしました。
水温と光条件
幼虫も成虫同様、室温管理と窓からの自然光のみで育成しました。
ゲンゴロウ、孵化幼虫
孵化幼虫の体長は約27ミリ。
孵化幼虫は、からだが固まると入れて置いた赤虫を摂餌するようになります。
幼虫は共食いをするため、孵化幼虫を見つけたらすぐに回収して、個別飼育をしましょう。
(孵化した幼虫が複数食べられてしまう経験あり)
ゲンゴロウ、2齢幼虫
1齢幼虫は平均6.6日で脱皮をして2齢幼虫になりました。脱皮日数は最短で6日、最長で8日でした。
脱皮直後の体長は約45ミリ。さすがゲンゴロウなので大きいですね。
2齢幼虫は冷凍赤虫も摂餌しますが、冷凍コオロギの方がエサ効率が良いので早めの切り替えをおすすめします。
ゲンゴロウ、3齢幼虫
2齢幼虫は平均9.4日で脱皮をして3齢幼虫になりました。脱皮日数は最短で8日、最長で10日でした。
脱皮直後の体長は約64ミリ。このサイズの幼虫は、迫力があります。
3齢幼虫には冷凍コオロギのみを与えましたが、ピンセットで与える際、アゴではさむ力強さが伝わってきます。
誤って幼虫にはさまれないよう注意してください。
ゲンゴロウ、上陸直前の幼虫
3齢幼虫は平均13.9日で強制上陸させました。上陸までの日数は最短で12日、最長で15日でした。
上陸直前の幼虫は、エサを食べなくなり、透けて見えていた消化管が薄く見えにくくなります。
この状態が上陸のタイミングです。
ちなみに上陸直前の幼虫は、8センチを超える大きさです。デカイ!!
ゲンゴロウ、上陸方法
上陸容器には、100円ショップで購入したクリアカップ(8.9×13.4×8.9センチ)を使用しました。
カップには、水道水であらかじめ加湿しておいたピートモスを容器の8割程度まで入れ、その上に幼虫をのせます。
ピートモスは、容器の底から1センチ程度は指で強く押し固めておき、その上にはほぐした状態のものを入れています。
また、上陸させたカップには、脱走と乾燥防止のためフタをしました。フタには、直径9×深さ4センチ程度のカップを逆さまにして上陸用のカップにかぶせ、マスキングテープでズレないように3箇所固定しました。
ピートモスについて
ピートモスは、ホームセンターの園芸コーナー等で購入できます。
水道水で加湿したピートモスは、軽く手で絞って水が落ちる程度の状態のものを使用しています。
上陸させた幼虫がうまく蛹室を作らないときは、ピートモスの水分量があっていない可能性がるので、状況を見て水分量を調整してください。
ゲンゴロウ、蛹化
潜っていった幼虫をそっと観察してみると、ちゃんと蛹化していました。
この個体は上陸させてから約10日で蛹化していました。
ゲンゴロウ、羽化
この個体は蛹化してから約10日で羽化していました。羽化直後は真っ白の姿で何度見ても美しいです。
羽化後5日程度蛹室内で過ごし、羽化脱出してきました。
上陸させてから羽化脱出するまでの平均日数は26日でした。最短で24日、最長で29日でした。
ゲンゴロウは、大型で飼育種として人気があります。
かつては身近な水生昆虫の代表でしたが、現在は絶滅のおそれのある種になっています。
さらに2023年からゲンゴロウは「特定第二種国内希少野生動植物種」に指定されており、販売・頒布目的の捕獲・譲渡が禁止されています。
研究目的や趣味の飼育などは規制対象外ですが、飼育のために野外から採集するときは、獲りすぎに注意し節度をもって行うように心がけましょう。
また、法律で採集や飼育が禁止されているゲンゴロウ類もいるので事前にしっかり調べておきましょう。
本記事がゲンゴロウや同属のゲンゴロウ類の繁殖の参考になればうれしいです。